「今だけ半額」の期限、過ぎたら戻していますか?サロンのクーポン表示で決める価格の書き方
「今だけ半額」「通常価格◯円のところ」「※新規のお客様限定」。クーポンの文章を頼むとき、まず決めておきたい3つの言い回しです。先に答えをお伝えします。期限を書いたら、期限で戻します。戻さないなら、期限を書きません。
2026年3月には、ホットペッパービューティーのクーポン表示をめぐって、エステティックサロンを運営する3社に消費者庁の措置命令が出ました。問われたのは施術の言い回しではなく、「有効期限」の扱いでした。
文章より先に決める4つの線
「今だけ」と書いた期限は、過ぎたら元の価格に戻すか。「通常価格」は、その価格で通常のメニューとして出していた期間があるか。割引の条件や追加料金を、小さい注記に押し込んでいないか。金額は税込か。この4つを自店で確定させてから、AIに文章を頼みます。
クーポンで問われるのは割引の大きさではなく表示と実際の一致
サロンでは、同じキャンペーンが複数の面に載ります。ホットペッパービューティーのクーポン欄、Instagram、LINEの配信文、店頭のPOP。1か所で決めた条件が、面ごとに少しずつずれていきます。ずれた面が1つでもあれば、そこが表示と実際の食い違いになります。
値上げのときの伝え方は『値上げしても選ばれるサロンへ。価格改定前に整えたい3つの伝え方』で整理しました。値下げの表示は、決めた条件を1枚のメモにして、全部の面へ同じ文で写すほど、表示と実際がずれにくくなります。
景品表示法の第5条第2号は、価格などの取引条件を、実際より著しく有利だと誤認させる表示を禁じています。消費者庁はこれを「有利誤認」と呼び、価格の表示については「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)で考え方を示しています。
ここで問われるのは、割引の大小ではありません。表示した条件と実際が合っているかです。半額にすること自体は、サロンの自由です。問題になるのは、「通常価格」と書いた金額で実際には売っていなかったり、「今だけ」の期限が過ぎても同じ割引が続いていたりする場面です。
「今だけ」の期限 ─ 2026年3月にサロン業界で起きたこと
消費者庁は2026年3月25日、エステティックサロンを運営する3社に対し、景品表示法に基づく措置命令を出しました。対象になったのは、ホットペッパービューティーの店舗ページ「クーポンメニュー」に載せていたクーポンの表示です。
発表資料に載っている表示例を、金額と期限の部分だけ引きます。「24200→5500」「有効期限:2024年12月末日まで」。別の社では「今だけ70%OFF」「¥5000→¥1500」「有効期限:2024年12月25日まで」。どれも、期限内にそのクーポンで申し込んだ場合に限り、割引が適用された価格で施術を受けられるかのように見える表示でした。
実際には、期限を過ぎて申し込んでも、期限内と同じ額の割引が適用されていました。消費者庁は、これを有利誤認に当たると判断しています。割引の額や施術の中身は、命令の中で問われていません。期限を書いておきながら、期限のあとも同じ割引を続けていた。消費者庁が見たのはその一点です。
発表資料の別表には、同じクーポンの有効期限が「2024年12月末日まで」「2025年1月末日まで」「2月末日まで」と、月ごとに付け替えられていた経過が載っています。期限を延ばし続けた先にあったのが、期限後も同額の割引という実態でした。
サロンの現場に置き直すと、次の場面が当てはまります。
- ・月末で切れるはずのクーポンを、翌月も同じ内容で出し直している
- ・「今だけ」と書いたまま、実際には常時その価格で受けている
- ・期限が来ても受付で「まだ使えますよ」と案内している
期限を書くなら、期限で戻す。戻さないなら、期限を書かない。判断はこの二択に絞れます。延長するときは、延長した事実と新しい期限を、期限を出している面すべてでそろえます。一度の延長がどう見られるかまでは資料に書かれていないので、迷うときは消費者庁の窓口に確認してください。延長を重ねて、割引後の価格で出している期間のほうが長くなると、次の章の目安で見たときに、元の価格は「通常価格」として並べられなくなります。そうなったら期限と「通常価格」を外し、割引後の価格を通常の価格として書き直します。
「通常価格」と並べられる条件 ─ その価格で出していた期間があるか
「通常価格10,000円→初回5,000円」のように、高い価格と安い価格を並べる書き方を、価格表示ガイドラインは「二重価格表示」と呼びます。「70%OFF」のような割引率の表示も、ガイドラインでは同じ考え方で見ます。過去の販売価格を比較の相手にする場合、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であれば不当表示に該当するおそれはない、とされています。
その「最近相当期間」の目安が、ガイドラインに数字で書かれています。個々の事案ごとに検討されるとしたうえで、一般的な考え方として示されている線です。
| 見る点 | ガイドラインの目安 |
|---|---|
| さかのぼる期間 | セール開始時点からさかのぼる8週間(販売していた期間が8週間未満なら、その期間) |
| その中での割合 | 比較対照にする価格で販売していた期間が、販売期間の過半を占めていること |
| 短すぎる場合 | 上を満たしても、その価格で販売していた期間が通算2週間未満なら「最近相当期間」とはいえない |
| 古すぎる場合 | その価格で販売した最後の日から2週間以上たっている場合も同じ |
「販売していた」は、通常のメニューとしてその価格で出していたことを指します。ガイドラインは、実際にその価格で買った人がいたことまでは求めていません。ただし、比較のための実績作りとして一時的にその価格で出していた場合は「販売していた」とはみられない、とも書いています。
ガイドラインが不当表示のおそれがある例として挙げている「販売実績の全くない商品」「セール直前に販売が開始された商品」を、サロンに置き直すと新メニューです。キャンペーンを決めてから新メニューを出し、当日から「通常8,000円→お試し4,000円」と書く。この場合、8,000円で出していた期間がありません。ガイドラインは、セールの実施を決めたあとに販売を始めた商品について、セール前の価格で売っていた期間を正確に書いたとしても、不当表示に該当するおそれがあるとしています。
「新規のお客様限定」の初回価格も、同じ考え方の別の形です。ガイドラインには、顧客の条件によって価格に差がある場合の項があり、会員価格を強調するために「非会員価格」を並べる例が挙がっています。誰でも容易に会員になれて、非会員価格で買う人がほとんどいないなら、不当表示に該当するおそれがある、という整理です。
サロンの「新規限定」に置き換えると、通常価格で施術を受けているお客様がほとんどいないのに「通常価格」を並べる形が、この整理に近づきます。ガイドラインに新規限定そのものの例は無く、線引きは個別に判断されます。並べる価格が決まったら、次は、その条件をどこに書くかです。同じ「新規のお客様限定」でも、見られる点がもう1つあります。
小さい注記が注記として働かないとき ─ 条件と追加料金は価格の隣に
「初回半額」の下に「※新規のお客様限定・平日のみ・他クーポン併用不可」。大きく書いた部分を消費者庁は「強調表示」、小さく添えた注記を「打消し表示」と呼びます。2018年にまとめられた「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」では、注記は、強調表示だけでは伝わらない例外や条件があるときに限って使うものだと位置づけています。強調表示と注記が矛盾する場合は、景品表示法上問題となるおそれがある、とも書かれています。
消費者庁が分けて見るのは2つです。注記に気づけるか(表示方法)と、読んで意味が分かるか(表示内容)です。表示方法は、文字の大きさ、強調表示との大きさのバランス、配置箇所、背景との区別から総合的に判断されます。スマートフォンについては別に項目が立っていて、強調表示との距離や文字の大きさに加え、アコーディオンパネル(タップして開く欄)の中に注記が入っていないか、という要素も挙がっています。ホットペッパービューティーやInstagramのクーポンは、お客様がスマートフォンで開く前提で作ります。
表示内容の面では、4つの型が示されています。サロンのクーポンに当てはめやすいのは、条件が注記の側にある「別条件型」と、追加料金が注記の側にある「追加料金型」の2つです。留意点では、割引の適用条件が注記にあり、読んでもその内容が理解できないとき、読んだ人は条件なしで割引が受けられると受け取る、とされています。
条件が注記の側にある書き方
「初回半額」を大きく書き、適用の条件(新規限定、平日のみ、指名不可、他クーポンとの併用不可)を末尾の小さい注記にまとめる形です。注記が小さくて気づけなければ表示方法の問題、読んでも分からなければ表示内容の問題になります。
条件を価格の隣に置く書き方
「新規のお客様・平日のご来店で、初回◯◯円(税込)」。条件を価格と同じ大きさで、同じ行に書きます。注記に残すのは、読んでも受け取り方が変わらない補足だけにします。
追加料金型は、「カット込み5,500円」と書きながら、ロング料金やシャンプー代が別にかかる場合です。「全て込み」と大きく書いておいて、別にかかる料金は注記に回す。この形は、注記を読んでも追加があると分からなければ、実際より有利に見せる表示に当たるおそれがあります。追加料金があるなら、価格の隣に書きます。そして、価格の隣に置くと決めたその金額にも決まりがあります。税込かどうかです。
税込で書く ─ 店頭・クーポン・SNSで媒体を問わない
消費税法第63条は、事業者(消費税の納税義務が免除される事業者を除く)が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合、税込価格の表示を義務づけています。国税庁のタックスアンサーNo.6902「総額表示」の義務付けでは、店頭表示・チラシ広告・新聞やテレビの広告など、どの媒体で行う表示であるかを問わない、と説明されています(令和7年4月1日現在の法令等)。自店が対象かどうかは、税務署に確認してください。
認められる書き方も例示されています。「11,000円」「11,000円(税込)」「11,000円(税抜価格10,000円)」「10,000円(税込価格11,000円)」。税込と並べて税抜を書くこと自体は認められています。ただし財務省の「事業者が消費者に対して価格を表示する場合の価格表示に関する消費税法の考え方」(令和3年1月7日)では、税抜価格をことさら強調して消費者に誤認を与える表示は、総額表示義務を満たしているとはいえない、とされています。税込の金額は、見やすい大きさで書きます。
サロンで確かめたいのは、クーポン欄は税込なのに、店頭のメニュー表とInstagramの投稿は税抜のまま、という状態です。店頭とInstagramの側も「あらかじめ表示する価格」として総額表示の対象に入ります。国税庁の同じページには対象外の場面も挙がっています。価格を表示していない場合や、口頭で伝える価格には、税込表示は求められていません。裏返すと、AIに書かせる文章は、そのまま消費者へ「あらかじめ表示する価格」になる前提で作るものです。渡す金額は、その時点で税込にそろえておきます。
AIに渡す前に自店で確定させる5項目
ここまでの4つの線のうち、注記の線を「適用の条件」と「追加料金」に分けると、AIに渡すメモは5項目になります。
クーポンの文章を頼む前に確定させる5項目
- ・比較対照にする価格と、その価格を通常のメニューとして出していた期間(8週間の中で過半か、通算2週間以上か)
- ・期限を付けるか。付けるなら、期限の翌日に戻す価格
- ・適用の条件(新規限定、曜日、時間帯、指名の可否、併用の可否)。価格と同じ行に書く前提で
- ・追加でかかる料金(ロング料金、指名料、オプション)。「込み」と書くなら何が込みか
- ・税込の金額。税抜を並べるなら、税込を見やすい大きさで
ブログの下書きを頼むときの渡し方は『AIにブログ下書きを頼む前に。サロンが渡したい情報の型』にまとめました。クーポン版は、確定した数字と条件を先頭に置き、書き換えないでほしいと添えます。埋めた形は、たとえばこうなります(数字は例です)。
- ・比較対照: カット+カラー 11,000円(税込)。6月1日から通常メニューとして掲載
- ・期限: 9月30日まで。10月1日から11,000円に戻す
- ・条件: 新規のお客様・平日。価格と同じ行に書く
- ・追加: ロング料金 1,100円(税込)。価格の隣に書く
- ・表記: すべて税込。「通常価格」「今だけ」はこのメモ以外から足さない
上がってきた下書きで見る場所は、この記事の4つの線に絞ります。渡していない「通常価格」を作っていないか、「今だけ」「期間限定」を足していないか、条件を文末の注記に流していないか、税抜で書いていないか。ほかは読み物として整っていれば十分です。確定させたメモと、下書きに入った数字だけを突き合わせれば済みます。
自店の表示が景品表示法や消費税法のどこに当たるかは、消費者庁の表示対策課や税務署、所属の団体にご確認ください。ここまでが、AIに渡す前にサロンで確定させておく範囲です。
よくある質問
期限を延ばすとき、クーポン欄・Instagram・LINEのどこまで直す必要がありますか?
開店したばかりで、通常価格で出していた期間がありません。「通常価格→」は書けませんか?
注記の文字は、どのくらいの大きさなら読んでもらえますか?
参考にした情報
この記事の価格まわりは、消費者庁・国税庁・財務省が公開している資料を確認して書きました(2026年9月11日時点)。実際にクーポンを出す前に、最新の内容をご覧ください。
出典
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